衆院選後のキャスティングボート(Casting Vote、ボードではありません)を握ると言われる国民民主党の玉木雄一郎代表。現時点では金融緩和の継続を望んでいるようです(参考1)。次期政権の枠組みがどのような形になるかは不明ですが、基盤が不安定な中では金融引き締めに動くのは難しくなるでしょう。日銀が利上げしにくくなるとすれば、円安を止めるのは為替介入くらいしかなくなりますが、足元の介入警戒度はどの程度か。3つのポイントでチェックしてみました。

①ドル円の変動率
神田真人前財務官は今年の327日に「2週間で4%(の米ドル高円安)はなだらかとは到底言えない」と述べています(参考2)。急激かどうかの判断は、その時点の経済や市場環境にもよりますので、「2週間で4%」が絶対的な発動基準ではないでしょうが、1つの参考にはなると思います。

ドル円の変化率でみると、1030日の15340銭に対し、2週間前の16日は14962銭だったので2.5%の上昇。4%には届いていません。ただ、1カ月前の930日の安値14164銭を起点とすれば8.3%の上昇なので、2週間で4%変動の条件はクリアしているようにもみえます。

②投機筋のポジション
神田財務官は投機筋の動きも介入の背景にあったと語っています(参考3)。投機筋のポジションは、介入が効果を発揮するためにも重要です。円売りポジションが積みあがっていれば、介入を機に買い戻されて、円高方向に動きやすくなるためです。

ただ、足元をみると投機筋のポジションは円買い越し。米商品先物取引委員会(CFTC)が25日に発表した1022日終了週のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の円先物のポジションをみると、10月第3週で12771枚。9月第3週の66011枚から縮小しているとはいえ、投機的な円売りポジションが積みあがっている状況ではありません。

今年429日と51日に介入した際は。4月第3週に179919枚。711日と12日の際(観測)には、6月第4週に184223枚と今年のピークを付けていました。いま介入しても、前回ほどの効果は得られない可能性があります。
CFTCポジション241031
③「口先介入」の警戒度合い
三村淳財務官は18日、記者団の取材に応じ、150円を突破した円安・ドル高進行について「投機的な動きも含めて市場の動向を高い緊張感を持って注視していきたい」「やや一方向に、あるいは急速な動きもみられると認識している」と発言しました(参考4)。

「口先介入」の警戒度から言えば、「一方的」といった市場認識は示しているものの、「行動」には言及しておらず、レベルとしては「3」くらいでしょうか。今の段階では「口先介入」くらいしかできないかもしれませんが、あまり強い言葉を使ってしまうと、後で使う言葉がなくなってしまいます。

以上、3つのポイントを総合してみると、現在の介入警戒度は「3」程度。三村淳財務官は10月1日に、為替介入判断に関し「属人的に変わるわけではない」と述べています(参考5)。為替介入の判断は、財務官の「個性」にも多少は影響されると思いますが、これまでのケースを見る限り、現時点での警戒度は低いように思われます。
為替介入
参考1:https://jp.reuters.com/economy/M4KMJLDR3RIBFFB3T3GN2KO6DI-2024-10-29/
https://new-kokumin.jp/policies/specifics/specifics1
参考2:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-27/RZ5TI9DWRGG000
参考3:https://toyokeizai.net/articles/-/827930
参考4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA181HW0Y4A011C2000000/
参考5:https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GZND4LNQIFM4VIZUWFPFWJIGOQ-2024-10-01/