さて足元のAI相場はバブルなのでしょうか。近年のナスダックの上昇ぶりをみると、ITバブルが可愛く見えます。
*ナスダック総合指数(月足、期間1989年2月─2026年4月)
(出所:TradingView)
市場性、不確実性、ナラティブ、成功例、マネーなどバブル発生に必要な条件はそろっています。各国の中央銀行のバランスシートは依然巨大で、マーケットにはマネーが溢れています。SNSなどの発達で誰でも投資できるように・するようになり、巨額な資産を持つ個人投資家も増えました。バブルの対象となりやすい専業企業(同じEVを手掛けてもフォードよりテスラのほうが投機の対象になりやすい)もたくさんあります。
AI相場の特徴は特定企業への集中です。いわゆる「マグニフィセント7」は7銘柄だけでS&P500の時価総額の33─35%を占めており、2025年の米S&P500の上昇分の約4割をもたらしたと言われます。
ITバブルと違うのは、そうした対象企業が業績を上げていることです。エヌビディアの足元のPERは35倍程度と最近の株価下落後も依然高いですが、バブルと言えるほどではありません。過去10年間の平均で60%を超える純利益成長率をみせた同社が、このまま収益が伸びていくなら、2-3年で正当化できる水準です。過去の成長率を未来に当てはめる愚かしさもまたバブルの特徴ですが、業績に沿った投資がされているのは、ITバブルで懲りた投資家が冷静になっている証拠かもしれません。
ただ「錬金術」のようなマネー循環があるとの指摘もみられるのは気になるところです。米エヌビディアがオープンAIに出資し、その出資金を使ってオープンAIがエヌビディアから半導体を購入する。株式市場はどちらも評価し両社の株価が上がる。それによって、さらに資金を調達できる、というわけです。AI需要が思ったほどでなければ、このマネーの循環が逆回転する懸念もあります。
とはいえ過去のバブルにみられたような「バカげたエピソード」がAI相場にはあまり見られません。ポケモンカードが25億円超で落札されたり、40万円のウニが売れたりと、世の中的にはバブル的なエピソードに事欠きませんが、「今のマーケットにバブルのにおいは全然しない」と、これまでいくつものバブル相場を経験してきたベテランの市場参加者は言います。
中東を巡る地政学リスク要因で株価はまだ下がる可能性があります。しかし、過去にみられたようなバブル生成・崩壊の局面ではないかもしれない、ということは頭に入れておいていいと思います。その意味では、プライベート・クレジット問題の方が、マーケットの自律崩壊の要因となる信用不安につながりやすいだけに怖いかもしれません。
いまの株安局面でこう言うと笑われそうですが、中東情勢が落ち着けば、相場が回復(バブル化)する可能性も十分あるとみています。ただ、AI相場がバブル化する兆候を見抜くのは簡単ではありません。バブルは崩壊した後になって初めてバブルだったとわかるものです。不確実性を基にした「ナラティブ」を100%否定するのは不可能です。不確実なのですから。
ただ、過去の例からはバブル相場に特徴的な事象もいくつか見つけることができます。その1つが新しい株価評価尺度です。バブル相場では、これから急成長する企業は、PERなど既存の投資尺度では評価できないとして、新しい投資尺度が使われることがしばしばあります。
1980年代の日本のバブル相場では、土地の含み益を加味した「Qレシオ」、ITバブルでは、収益ではなく特定のウェブサイトを見ている人の数やヒット数が株価を測る新尺度として用いられました。前者は土地価格の下落で価値が失われ、後者は実現益にならない場合が多く株価指標としては廃れました。
もう1つ。「AI」というワードが会社名についただけで、利益も上げていないような会社の株価が急騰したり、IPOで大成功したりすると、危ない兆候です。お気を付けを。
*フォーライクスの村松さんのNoteに寄稿させて頂いたリポート(3月31日付)を、一部加筆・修正しました。
参考文献
・バブルの世界史(日本経済新聞出版、2023年)
・テクノロジー・バブル(日経BP、2020年)
・新訳バブルの歴史(パンローリング、2018年)
・ウォール街のランダム・ウォーカー(日本経済新聞出版、2007年)
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