日銀の追加利上げ自体は予想通りでした。ポイントは「打ち止め感」を出さないことでしたが、声明文などの文言をこれまで通りとすることなどによって、ひとまず回避できた印象です。ただ、日本の成長力が高まらない中では、これからの利上げの「ハードル」はさらに高くなってくるかもしれません。
*声明文の記述はこれまでとほぼ変わらず
日銀が18─19日に開催した金融政策決定会合で0.25%ポイントの追加利上げを決めました。利上げは今年1月以来、11カ月ぶり。政策金利は1995年以来となる0.75%に引き上げられました。
30年間破れなかった「0.5%の壁」をついに突破したことで、利上げの「打ち止め感」が出る可能性もありました。打ち止め、もしくは利上げ余地は大きくないと受け止められれば、為替が円安に進みかねません。円安が進めば輸入インフレのリスクが高まります。
日銀は今回、声明文や別紙の記述をほとんど変えませんでした。ポイントになる今後の金融政策運営の部分についても「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、『展望レポート』で示している経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と、10月展望リポートとほぼ同じです。
「実質金利がきわめて低い水準」「金融緩和の度合いを調整していく」といったキーワードが少しでも変われば、市場は利上げ打ち止め感を感じた可能性がありました。しかし、同じにしたことで、日銀の利上げ継続姿勢を示した格好です。
19日午後の東京市場では、日銀利上げ決定を受けて円安・株高の反応になりましたが、これは利上げ打ち止め感が出たわけではなく、ひとまずの材料出尽くしで、円売り・株買いが出た可能性があります。売買一巡後は落ち着いた動きに戻っています。
*日銀HPより引用
*利上げ余地はどの程度か
では、利上げ余地はどの程度あるのでしょうか。「金融緩和の度合いを調整」という言い回しは政策金利が中立金利に届くまで使うことが可能です。中立金利は、一般的に景気に好影響も悪影響も与えないニュートラルな金利水準を指すため、これを超えれば、金融環境は引き締めのフェーズに入ります。
植田和男総裁は、今年1月の会合後の会見で「これまで日本銀行の分析の例として中立金利について示ししたものは、名目では例えば1[%]から 2.5[%]くらいの間に分布している」と述べています。中立金利が1─2.5%だとすれば、日銀が今回、政策金利を0.75%に引き上げたことで、下限の1.0%には、あと1回の0.25%の利上げで到達することになりました。
1─2.5%というのは、あくまで1つの分析例です。そのときの会見でも、植田総裁は正確に中立金利を測るのは難しいと指摘していますし、その後、この具体的な数字を使うのは控えているようです。本日の会見でも、具体的な中立金利の水準は曖昧にしていました。具体的な数値を出すと、市場に利上げ余地を測られ、それが小さいと円売り材料にされかねません。
債券投資家にとっては、「金利の天井(価格は底値)」がみえないと買いに動きにくい(金利が上昇しやすい)という副作用はあるものの、現時点では中立金利は曖昧にしておく方が無難と判断しているのでしょう。
ただ、実際の利上げ余地はそれほど大きくはないかもしれません。「利上げ余地はまだある」というポーズを日銀は崩すことはできませんが、日本経済の体力が弱い中では、どうしても利上げ余地は小さくなります。政策金利を1.0%に引き上げたとしても日本経済が腰折れするとは考えにくいものの、これも状況次第です。やはり円安が「トリガー」かもしれません。
物価高対策が国民の求める一番の政策ですが、日銀が景気と物価の狭間で悩む時間帯は今後もしばらく続きそうです。
声明文:https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k251219a.pdf
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